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会社の業務で作成した資料の権利は誰のもの? 複雑な『職務著作』

2024年7月17日

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会社や団体からの業務指示に従い、従業員が作成したものの著作権は原則、会社に帰属します。
これを『職務著作』といいます。
ただし、従業員が在職中に作成した著作物のすべてが職務著作として扱われるわけではありません。
この記事では、職務著作として認められる要件や、作成者が退職した後の取り扱いの注意点などについて解説します。

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『職務著作』が認められる条件とは?

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個人が創作したものは通常『著作物』として扱われ、著作権法によって保護される対象(他人が無断で利用してはいけない著作物)になります。
著作物を創作した人のことを『著作者』といい、小説家や画家、作曲家などの「創作活動を職業とする人」だけが著作者になるのではなく、著作物を創作した人が著作者として扱われます。
たとえば、個人的に書いた手紙やスマートフォンで撮影した写真なども著作物に該当すると考えられ、多くの人が日常生活を送るうえで著作物を創作しており、それらの著作者とみなされます。

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通常、著作者になりうるのは、実際の創作活動を行なった人(作成者)ですが、創作活動を行う個人以外が著作者となる場合が法律により定められています。
その一つが『職務著作』です。
職務著作とは、会社や団体が従業員に業務として作成させた著作物について、その著作権が企業や団体に帰属する仕組みです。
通常、著作物の著作権は作成者が有しますが、職務著作の場合は最初から企業側に著作権があるため、作成者の同意なしに企業が著作物を使用、改変、譲渡することが可能です。
これは、従業員に著作権があると、企業が公開や複製のたびに従業員から許諾を得る必要があること、また複数の従業員の共同著作の場合は全員の合意が必要となり、その確認作業が煩雑になることから設けられたものです。
具体的には、新聞記者によって書かれた新聞記事や、従業員によって作成された各種の報告書や企画書、社内チームで開発したアプリやソフトなどが該当すると考えられます。

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ただし、会社や団体の従業員などが作成した著作物のすべてが職務著作として扱われるわけではありません。
下記のすべての要件を満たした場合に職務著作として扱われます。
1.その著作物をつくる「企画」を立てるのが法人その他の「使用者」であること
2.法人等の「業務に従事する者」が創作すること
3.「職務上」の行為として創作されること
4.「公表」する場合に「法人等の著作名義」で公表されるものであること
5.「契約や就業規則」に「職員を著作者とする」という定めがないこと

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上記に従うと、就業規則に特段の定めがない場合、会社などの従業員が業務のために作成した資料などは基本的に職務著作として扱われると考えてよいでしょう。
会社から具体的な指示がなかったとしても、職務遂行上、必要だと判断された場合は要件を満たすと考えられます。

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一方で、「業務に従事する者」は解釈が分かれるところです。
従業員やアルバイトといった雇用契約関係がある場合は「業務に従事する者」にあたり、派遣社員も雇用契約関係はありませんが、一般的には「業務に従事する者」にあたるとするケースが多いでしょう。
ただし、そのほかの雇用契約関係のない取締役や業務委託先の従業員などについては、指揮監督の有無などの実態を踏まえて、個別判断が必要とされます。
過去の例でいうと、雑誌社から依頼されたフリーのカメラマンは、雑誌社の指揮監督下にあったとはいえないとして「業務に従事する者」にあたらないと判断されたことがあります。
一方、フリーのデザイナーが業務委託によって作成した著作物が職務著作と判断されたケースもあります。
そのため、著作権の帰属先については、事前に取り決めておくのがよいでしょう。

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従業員が退職した後の取り扱いは?

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職務著作の要件に、従業員の在職状況は含まれていません。
そのため、職務著作の要件を満たしている場合は、作成者である従業員が退職した後も、企業側に著作権があるため、自由に使用して問題ありません。
逆にいうと、職務著作の要件を満たしていない場合、従業員の在籍状況を問わず、企業が自由に使用することはできないため注意が必要です。
過去には、退職した従業員が在職中に出版した書籍について、企業に職務著作の権利があるとして出版や販売の差止めを求める訴訟を起こしたものの、「法人等の発意に基づく」という要件を満たしていないとして、企業側の請求が却下されたケースも存在します。

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また、上記は企業側の立場からの注意点ですが、見方を変えると、職務著作の要件を満たしている場合、退職した従業員が著作物の権利を主張することはできないということです。
そのため、退職した従業員が自分の作った資料を外部に持ち出したり、転職先で使ったりすることは基本的にできません。
退職した従業員にとっては、著作物が企画書などの場合、同業他社に転職した後に活用できると考えるケースも多いと思いますが、著作権は元の勤務先にあるため、使用したことが発覚した場合は損害賠償を請求される可能性があります。
会社によっては、入社時や退職時に競業避止義務契約や秘密保持契約などを従業員と結んでいるケースもあるため、雇用契約をあらためて確認してみましょう。

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業務上作成したものは、要件を満たしていれば職務著作として会社に著作権があり、自由に使用できます。
しかし、要件を満たしていない場合は、意図せず著作権を侵害していたという事態になりかねないので、社内の利用規則などを確認しておきましょう。

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※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。

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参考文献:https://app.mig-sys.jp/mig/admin/articles/1001152

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