月次決算を導入しよう!
~経営状況の把握と年次決算早期化のために~
月次決算とは、一言でいえば、経営管理(損益や財政状況を明確にする)を目的として、毎月末日を決算期末と考えて試算表等を作成することになります。
年次決算とは異なり、会社法や税法等により強制されている手続きではありません。
■なぜ?月次決算を行うのか
月次決算の目的は、それぞれの会社により異なりますが、主には次のような理由により行われています。
1.素早く経営状況を把握し、迅速な改善を行う。
2.事業計画と現状のギャップを確認し、以後のアクションプランを策定する。
3.正確な年間売上、利益の予測を行う。
4.月々の処理を的確に行うことにより、年次決算を早期に確定する。
■月次決算は、いつまでに?
現状で皆さんの会社では、いつまでに試算表が作成されていますか?
当月分を翌月末日前後に作成している会社が多いといわれています。
理想は、月末日から10日程度で試算表が作成されることです。
しかし、月次決算は経理部門だけで行えるものではありません。
1 経営者のイニシアティブ (経営状況の早期把握が目的です。やはり経営者の主導が重要になります)
2 各部署の協力体制 (売上・仕入の発生主義への変更、経費精算、在庫の把握)
3 社内文書の整備 (社内規程、申請書)
上記のような社内体制が整備されて初めて、月次決算の早期化が実現します。
■月次決算のフロー
月次決算導入のポイントは、発生主義化することです。入金や支出があった際に取引を記録することを現金主義といいますが、それに対して、費用や収益を現預金の入出金とは別に、取引が発生した際に認識することを発生主義といいます。
1.残高確認
基本的な作業になりますが、現金や預金について、帳簿残高と実際残高を確認します。売掛金や買掛金、受取手形も台帳や手形帳と付け合わせします。
2.棚卸
売上原価を把握するためには必須の作業になります。可能な限り実地棚卸を行い商品の紛失やデットストックも認識してください。
3.仮勘定の精査
仮払金や仮受金は可能な限り使用せず、その都度、適正な科目で会計処理を行います。
4.経過勘定
前払費用や未払費用を認識して、適切な利益の把握や年次決算の早期化に備えます。 (固定資産税や年払保険料があれば月々計上)
5.減価償却費
一般的に、減価償却費が損益に与える影響は大きくなります。12分の1を毎月計上しましょう。
6.引当金
賞与引当金や退職給付引当金は、税法上は損金となりませんが、本来の損益を把握するためには、支出額を見積って計上しましょう。
7.時価の把握
有価証券や土地の価額が変動し、帳簿価額とかい離した場合は、試算表に反映
させなくとも時価を認識しましょう。
8.概算計上
単価や数量等、取引の詳細が未確定な取引がある場合には、年次決算と異なり、最終数値となるわけではないため、概算で計上して月次決算の早期化を目指しましょう。
■ポイント
月次決算によって自社の経営状況を把握することにより、精緻な利益予想やその後の改善計画を立案しやすくなることはすでに説明しましたが、利益だけに注目するのではなく、債権の回収可能性や固定資産の時価、投資のタイミング等を認識することにより、月次のキャッシュフローを常に確認してください。
月次試算表の作成はもちろん、前期比較や部門別損益、予算実績対比、検討事項を盛り込んだ月次報告書を作成していただくと、経営管理における月次決算の重要性が増加していくものと考えます。