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本社と支店が別の都道府県にあるとき、最低賃金はどう適用される?

2021年9月6日

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最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなくてはならない、賃金の最低額を指します。
最低賃金法によって定められた制度で、違反すると罰則も科せられます。
47都道府県ごとに定める『地域別最低賃金』は毎年10月初旬に発効されており、もし最低賃金の引上げがあれば、使用者はこれに対応しなくてはなりません。
では、会社の事業所が複数の都道府県にある場合は、どう考えればよいのでしょうか。
今回は、別々の都道府県に事業所がある場合の最低賃金の取り扱いについて解説します。

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事業所がある地域の最低賃金が適用される

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地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められた最低賃金で、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます
2020年10月初旬に発効された地域別最低賃金は、東京都が1,013円と全国で最も高く、神奈川県の1,012円、大阪府の964円がそれに続きます。
一方、全国で最も低いのは、秋田県、鳥取県、島根県、高知県、佐賀県、大分県、沖縄県の792円でした。
東京都に比べると、221円もの差がついています。
参考までに、2021年10月は全国一律28円の引上げが予定されています。
最も高い東京都が1,041円、最も低い秋田県などが820円になる予定です。

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最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会によって、地域の実情や経済状況を踏まえた議論が行われ、その結果をもとに、各都道府県の労働局長が決定します
そのため、全国一律ではなく、このような差が出るわけです。

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もし同じ会社の事業所が別々の都道府県にある場合は、それぞれの事業所がある地域の最低賃金が適用されます

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たとえば、本社が東京都にあり、支社が大阪府にある場合は、本社の最低賃金は1,013円で、支社の最低賃金は964円となります。
給与計算を本社が一括して行っている場合でも、あくまで事業所の所在地の最低賃金が適用されることに注意しましょう。

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所在地の最低賃金が適用されないケースも

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ただし、それぞれ異なる都道府県に事業所がある場合でも、その事業所がごく小規模で独立性のない場合は、本社機能をもつ事業所と同一のものとみなされ、それぞれの最低賃金のうち一番高額なものを採用することになります
たとえば、上記の例でも、大阪府の支社が小規模で独立性がないと認められれば、本社のある東京都の最低賃金が採用されることになります。

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また、派遣先と派遣元で事業所の所在地が異なる場合にも注意が必要です。
原則的に、派遣社員には派遣元の所在地に関わらず、派遣先である就労地域の最低賃金が適用されることになります。
たとえば、派遣元である派遣会社の所在地が埼玉県にあり、派遣先の企業の所在地が東京都にある場合は、東京都の最低賃金1,013円が採用され、埼玉県の最低賃金928円は採用されません。

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これらのことから、各事業所の賃金をそれぞれの地域の最低賃金に合わせて運用する場合には、注意が必要です。
別の事業所に異動させる際に賃金の変更が必要となる可能性が出てきますが、うっかり対応を怠り最低賃金を下回ってしまうと、最低賃金法違反になってしまいます。

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安全なのは、各事業所のなかで最低賃金が一番高い地域の額に合わせてしまうことです。
たとえば、東京都、大阪府、福岡県に事業所があれば、すべて東京都の最低賃金1,013円に合わせます。
こうすることによって、人事異動のたびに賃金を変更せずに済みます。

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また、この方法は、従業員の仕事へのモチベーションを保つことにもつながります。
業務内容が変わらないにもかかわらず、異動によって賃金が下がると、従業員は不満に感じてしまうでしょう。
結果として、生産性の低下や離職などを引き起こしてしまうことになります。

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最低賃金はあくまで目安として捉え、従業員の生活や気持ちを考えて、給与体系を決定することが大切です。

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※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。

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参考文献:https://mi-g.jp/mig/article/detail/id/27405?office=Z17DLaHtybU%3D

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