個人事業主の必要経費
事業を行っていくうえでは、様々な支出が発生しますが、所得税を計算する際にどの程度まで経費として認められるのかとお困りの方も多いのではないでしょうか。今回は、事業所得の計算上認められる必要経費について触れたいと思います。
目次
1.事業所得の金額とは
2.必要経費に算入できないもの
3.家事関連費とは
4.帳簿書類
5.最後に
1.事業所得の金額とは
事業所得の金額は、「その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」とされています。収入金額はある程度把握することが可能だと思われますので、事業所得の金額の算定にあたっては、必要経費の範囲を把握することがポイントとなります。
所得税法では、必要経費は以下に掲げるものと定義されています。
(1)総収入金額に係る売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額 (減価償却費を除き、その年において、債務の確定したものに限ります。)
つまり、必要経費は業務との関連性が重視されますが、業務範囲は極めて広範にもなりますので、支出の目的、金額の妥当性などを勘案して、慎重な見極めが必要となります。
2.必要経費に算入できないもの
必要経費として認められるためには、業務との関連性が必要となりますので、家族旅行や個人的な飲食代などは必要経費として認められません。(これらの費用は、家事上の経費といわれます。)所得税や住民税などの税金、罰金なども必要経費から除かれます。
また、業務に関連する費用であっても、以下に掲げるものは必要経費として認められないことにも注意が必要です。
(1)生計を一にする配偶者その他の親族に支払う賃借料(逆に、受取った人も所得としては考えません。)
(2)生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与(青色事業専従者給与などは必要経費とされます。)
3.家事関連費とは
業務の遂行上、一つの支出が家事上と業務上の両方に関係する場合があります。これらの費用は家事関連費といわれます。一般的には、自宅兼事務所の地代家賃、水道光熱費、通信費などが挙げられます。
この家事関連費のうち必要経費として認められるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。 地代家賃については床面積、水道光熱費・通信費などは、その利用状況に合わせてプライベートな部分と業務用の部分とを区分する方法が一般的です。
4.帳簿書類
青色申告を行っている個人事業主は、帳簿書類を原則として7年間保存することが義務付けられています。帳簿書類には、以下のものが含まれます。
(1)帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳など)
(2)決算書類(貸借対照表、損益計算書など)
(3)現金預金取引等の関係書類(領収書、預金通帳、請求書など)
(4)その他の書類(見積書、注文書、納品書など)
必要経費の証憑書類としては、領収書、預金通帳、カード明細などが挙げられます。これらの書類は、紙による保存が原則とされますが、所轄税務署長の承認、一定のルールに沿った処理を行うことを要件に、スマホやデジカメによるスキャナ保存も認められますので、書類の保管コストも削減されます。
5.最後に
必要経費算入の是非は、税務調査においてもポイントとなるところです。特に、家事費、家事関連費の必要経費算入について否認される事例がみられます。
特に金額が大きくなる経費については、事前に領収書や預金通帳に取引の内容、相手先をメモするなどし、経費性を立証できるように備えておくことが必要です。