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遺留分制度の見直し

2019年8月30日

昨年の民法改正を受けて税法の規定もいくつか改正が行われています。今回は、民法改正に伴う税法の改正点のうち、本年7月以後の相続に適用される「遺留分制度」に関する見直しについてご紹介させていただきます。

 

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人が民法で保障されている最低限度の相続財産の額のことをいいます。仮に、相続人が妻、子供2人とすると、これらの法定相続分は妻が1/2、子供2人が各1/4となりますが、遺留分はその半分(妻は1/4、子供2人は各1/8)となります。

 

改正前は、遺言等により遺留分が侵害される行為が行われた場合、遺留分権利者は「遺留分の減殺請求」を行うことにより、遺留分減殺請求権の範囲で遺留分侵害行為の効力は消滅し、目的物上の権利は遺留分権利者に帰属するという物権的効果が生じるとされていました。

 

改正後は、遺留分権利者が「遺留分侵害額の請求」を行うこととなり、従来の物権的効果は否定され、遺留分侵害額の請求から生じる権利を金銭債権と位置付けることとされています。つまり、遺留分の侵害額相当につき金銭による支払が原則となります。

 

上記改正は、相続税の取扱い上は特段変更ありません。また、遺留分の侵害額につき金銭による支払が行われる場合も特段問題とはなりません。しかしながら、金銭での支払が困難となり、不動産等の資産を移転する場合には、問題となりえます。

 

改正前は、遺留分減殺請求を受け相続財産である不動産を移転させたとしても、その「物権的効果」により、不動産の含み益に譲渡所得課税は生じませんでした。しかしながら、改正後は、本来金銭で支払うべきところ、不動産を移転させることによりその支払債務を解消したという形になりますので、資産を移転させた者に譲渡所得課税が生じます。相続した不動産を移転させる場合、不動産の取得費は被相続人における不動産の取得費を引き継ぐこととされますので、低額となることも考えられます。その場合、多額の譲渡所得が生じる点に注意が必要です。

 

 

(投稿:新関)

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